少子高齢化により労働人口が減少する中で、健康で長く働ける人材の確保が企業の大きな課題になっています。そのため、企業としては従業員の心身の健康を維持するためのサポートを提供することが重要です。
企業が提供する健康に関する福利厚生では、食事や運動に目を向けられがちですが、「睡眠」も心身の健康に大きな影響を与える要素です。
そこで、今回は健康経営を促進するために取り入れるべき睡眠に関する福利厚生について解説します。睡眠が業務へ与える影響や、具体的な取り組み事例なども併せて紹介するので、最後までご覧ください。
健康経営を促進する重要性
企業が健康経営を促進することは、単に社員の健康を守るだけでなく、組織の持続的な成長や競争力強化にも直結します。以下に、健康経営を促進することが重要な理由を3つご紹介します。
- 生産性向上と業績に貢献する
- 優秀な人材の確保や定着につながる
- 企業価値の向上と社会的信頼の獲得につながる
生産性向上と業績に貢献する
健康的な社員は、集中力や判断力、業務効率が高く、欠勤や遅刻も少ない傾向があります。企業としては、医療費や労災リスクを減らせるだけでなく、全体の労働生産性を高めることが可能です。
社員が元気に働ける環境は、長期的な業績安定にも貢献します。
優秀な人材の確保や定着につながる
働きやすく、健康を重視する企業文化は、求職者にとって魅力的な要素です。特に若い世代や子育て世代は「健康的で安心して働ける職場」を重視する傾向が強く、健康経営に積極的な企業は採用競争で優位に立ちやすくなります。
また、既存社員の定着率向上にもつながり、離職コストの削減やノウハウの蓄積といったメリットも生まれるでしょう。
企業価値の向上と社会的信頼の獲得につながる
健康経営に取り組む姿勢は、社内だけでなく社外からの評価にもつながります。健康経営優良法人認定制度などの外部認証を取得することで、企業の社会的責任(CSR)やESG(環境、社会、ガバナンスの各要素を重視する経営スタイル)への取り組みとしても評価されやすくなるでしょう。
投資家や取引先からの信頼にもつながり、企業全体のブランドイメージや価値向上を促進する大きな要因となります。
なぜ従業員の睡眠が企業にとって重要なのか
近年、食事や運動に関する福利厚生は多くの企業で取り入れられていますが、同様に、もしくはそれ以上に重要なのが「睡眠」に関する福利厚生です。睡眠不足は集中力や判断力の低下、作業ミスの増加、さらにはメンタル不調や生活習慣病のリスクにも大きな影響を与えます。
どれだけ栄養バランスの良い食事や定期的な運動を行っていても、睡眠が不十分であれば健康効果は不十分になってしまうでしょう。実際、睡眠改善に取り組むことで、生産性や創造性の向上が認められた企業事例もあり、企業全体のパフォーマンスにも大きく影響することがわかっています。
企業が社員の睡眠を支援することは、健康経営の質をさらに高めるとともに、持続可能な成長にも寄与する重要な取り組みといえるでしょう。
睡眠に関する福利厚生を取り入れるメリット
企業が睡眠に関する福利厚生を取り入れ、従業員へ提供することには、主に以下の3つのメリットがあります。
- 生産性・集中力が向上する
- 健康維持や医療費削減につながる
- 採用ブランディングや人材定着につながる
生産性・集中力が向上する
良質な睡眠は脳や身体の回復に欠かせない要素です。十分な睡眠が確保されることで、集中力・判断力・記憶力などが向上します。
企業として睡眠改善の支援を行うことで、業務効率の改善やミス・事故の予防につながり、従業員が高いパフォーマンスを発揮することができるようになるでしょう。特にデスクワーク中心の職場では、睡眠不足によって業務効率が低下しやすい傾向があるため、企業として睡眠改善に積極的に取り組むことが推奨されます。
健康維持や医療費削減につながる
慢性的な睡眠不足は、高血圧、糖尿病、肥満、うつ病など、様々な生活習慣病のリスクを高めます。企業が従業員の睡眠環境を整えたり、睡眠教育を実施したりすることで、こうした健康リスクを予防することが可能です。
結果として、欠勤率の低下や医療費・労災リスクの削減につながり、企業としてのコスト削減にも寄与します。
採用ブランディングや人材定着につながる
社員の睡眠にまで配慮する福利厚生は、企業が従業員を本当に大切にしているという姿勢の表れです。睡眠改善に取り組むことで、従業員満足度が向上し、職場への信頼やロイヤリティが高まります。
また、こうした取り組みは外部からも評価されやすく、採用ブランディングやESG評価にも良い影響を与えます。睡眠に関する福利厚生を取り入れることは、長期的な人材定着や企業イメージ向上にもつながる重要な施策です。
睡眠に関する具体的な福利厚生の取り組み事例
睡眠に関する福利厚生の具体的な事例を紹介します。
- 仮眠制度の導入
- 睡眠改善セミナーの実施
- 睡眠改善グッズの購入費補助
- 柔軟な勤務形態の導入
仮眠制度の導入
仮眠制度とは、従業員が業務の合間や昼休みに短時間の仮眠を取れるよう整備された福利厚生です。15〜20分程度の短い仮眠は脳のリフレッシュに最適で、生産性や判断力の向上が期待でき、実際に利用する従業員の多くがその効果を実感しています。
仮眠を取ることには、特に午後の集中力向上や作業ミスの防止に効果があるとされており、1日を通して高いパフォーマンスで業務に取り組むことができるようになるでしょう。仮眠制度を導入する際は、業務中の従業員に影響を与えないように、ワークスペースから隔離して仮眠スペースを設けると良いです。
睡眠改善セミナーの実施
睡眠改善セミナーや講座は、社員に正しい睡眠の知識を身につけてもらい、生活習慣の見直しや健康意識の向上を図る福利厚生の取り組みです。専門家による講義やアドバイスを通じて、質の高い睡眠をとるための環境づくりや就寝前の過ごし方など、実践的な内容を学ぶことができます。
オンライン開催も可能で、全国の社員に手軽に提供できる点も魅力です。睡眠の質が向上すれば、集中力や生産性の向上、メンタル不調の予防にもつながるでしょう。
睡眠改善グッズの購入費補助
睡眠改善グッズの購入費補助は、社員が質の高い睡眠を得るための環境作りを支援する福利厚生です。
具体的には上記のような快眠をサポートするアイテムの購入費用を一部補助する制度で、社員のセルフケア意識を高めるきっかけにもなります。個人のライフスタイルに合わせて無理なく取り組めるため、利用率も高く、健康経営の施策として導入しやすいのが特徴です。
また、購入費補助ではなく、寝具メーカーと提携して割安価格で寝具を購入できるようにするという形態を採用する企業もあります。
柔軟な勤務形態の導入
従業員個人の生活リズムは、人それぞれ異なります。そのため、個人のリズムに合わせた柔軟な勤務形態を導入することも、睡眠の質を向上させる取り組みの一つです。
柔軟な勤務形態とは、具体的に以下のことを指します。
- フレックスタイム制:始業・終業時間の柔軟化
- 在宅勤務・リモートワーク:通勤時間の削減
- 時差出勤制度:出勤時間の柔軟化
これらの勤務形態は、従業員の睡眠改善だけでなく、働きやすさ全体を向上させる取り組みとして多くの企業が導入しています。
まずはセルフチェックの導入から
睡眠に関する福利厚生を導入する前に、まずは実態を把握することから始めましょう。睡眠に関するアンケートやセルフチェックを従業員に実施してもらい、その結果から必要か否か、どんな取り組みを実施すべきか判断することが重要です。
アンケートやセルフチェックを実施する際は、以下のような項目をチェックしてもらいましょう。
- 毎日の平均睡眠時間
- 熟睡度(夜中に目覚める回数など)
- 起床時の疲労感
- 日中に眠気を感じるか
- 睡眠中にいびきをかくか
- ベッドや寝具の状態
- 寝室の温度や湿度
- 騒音や光の影響
- 睡眠前の習慣
これらの項目を確認して、自身の睡眠の問題点や環境の改善点を見つけ出してもらうことが、取り組みの第一歩です。従業員一人ひとりが自身の睡眠に向き合う機会を与えることも、健康経営の促進につながります。
睡眠を改善して従業員の健康を促進しよう
従業員の睡眠を改善することは、従業員個人の健康状態を良好に保つだけでなく、生産性や集中力を向上させて業務にも良い影響を与えます。健康経営を促進する企業として、企業価値の向上や採用ブランディングにもつながる可能性があるので、積極的に取り入れていきましょう。
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